胸やけという症状はありふれたものであるため、それほど大事とは感じないかもしれません。しかし普通の胸やけと感じている人の中に、場合によっては命に関わる重症となる可能性を持った方が必ず存在します。
胸やけを起こす原因として頻度が高いGERDでは、胃酸により食道が炎症を起こします。放置すると炎症が悪化し、食道の蠕動運動(食べ物を胃に送り込む動き)が低下するようになり、すると逆流した胃酸を胃に押し戻す力がさらに弱くなり、またGERDが悪化するという悪循環を引き起こします2)。
炎症が進み粘膜がただれて深掘れの潰瘍になると、出血を起こすことがあります。また潰瘍の部分が引きつれを起こす結果、食道が「狭窄」した状態となり、食べ物が通りづらくなるといった症状へ進行することもあります。
そのほか、食道がんや胃がんのように怖い病気でも胸やけを起こすことがあります。胃潰瘍ではみぞおち付近の痛みを感じることが多く、進行すると大出血や消化管穿孔(せんこう)と呼ばれる緊急事態となる可能性があります。
狭心症や心筋梗塞など心臓からくる胸の症状は時間の猶予がないことも多く、一刻も早い対処が必要です。
軽い胸やけを感じるくらいだから、自分で胃薬を買って飲んでいればいいかな、というような判断は思わぬリスクを招く可能性があります。